開店から20年くらい通い続けてきた床屋さんに、引っ越しして数か月ぶりに入店した。実は眉の長さが気になって以前のように鋏を入れてほしかったのである。慣れない新しい床屋さんにはどうも頼めないのである。大抵は女性の方も、決まった美容院に住んでいる場所は変わっても何十年も通っている方は多いようだ。現に妻もそうだからである。
知らない床屋さんでいちいち髪型の注文を付けるのは面倒だから、「いつものように良いですか」と言われるとお任せするお客としても安心する。床屋さんも常連さんとそれぞれに合わせた会話をすることに慣れている。不思議だが床屋さんとはどの方も気兼ねなく会話を交わしている。1対1でサービスを受ける時間的空間に気持ちが癒されるのであろう。
都会で他人と世間話をする機会は少ない。お互いに自宅も名前も知らない仲で、床屋さんは世間話ができる唯一の場所のような気がする。私の通ってきた床屋さんの出身地が、たまたま妻と同じ長崎県の同じ郡部の町で何となく以前から親近感があった。話も田舎への帰省の話題から、田舎の親族の話題、自分の家族の話題などしているうちに徐々に深く親しくなった。
商売は人と人との繋がりで成り立っている。ビジネスマンの営業職も同じであろうし、一朝一夕には信頼関係は生まれない。やはり、人と会って話す時間と回数に対人関係の深さは比例するようである。話は元に戻るが、数か月ぶりに従来の床屋さんへ行って帰宅したら、妻が開口一番「きれいになったね」とのことである。他の床屋さんとの違いが判ったのであろう。
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